歯周病の要因と全身疾患の関係性

歯周病を進行させないためには、悪化させる要因を知り、適切に対応することが必要です。
また、進行した歯周病の影響範囲は、口の中だけではありません。
細菌から出た毒素が全身に回ると、全身疾患を引き起こすリスクがあります。
何が歯周病を進行させるのか、また糖尿病などの全身疾病と歯周病の関係性について、東京・九段下の加部歯科医院が詳しく解説いたします。
歯周病を進行させる要因
歯周病は、プラーク・歯石によって引き起こされます。
そして、発症した歯周病は、以下の因子(リスクファクター)によって、症状が進行する可能性があります。
糖尿病などの生活習慣病

糖尿病をはじめとする生活習慣病によって全身の免疫力が低下していると、歯周病が進行しやすくなります。
糖尿病は、1型・2型いずれも注意が必要です。
糖尿病になると、インスリン不足で血の巡りが悪くなり、全身の免疫力が低下します。その結果、口の中で歯周病原性細菌が繁殖しやすくなるのです。
喫煙

様々な健康被害を招く喫煙は、歯周病とも深く関わっています。
タバコに含まれるニコチン・タールや一酸化炭素は、口の中の衛生状態の悪化や、歯の周りの組織の免疫力低下を招きます。細菌が繁殖しやすくなるため、歯周病が早く進みます。
そのまま喫煙を続けていると、歯周病治療を行っても効果が出にくく、再発の可能性も高くなります。
歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしり・食いしばりなどによって、歯に必要以上に強い力が加わると、歯そのものや周りの組織、あごの関節に悪影響を及ぼし、歯周病の悪化を招きます。
自覚がない場合も多いですが、肩こりや頭痛に悩んでいる方の中には、歯ぎしりなどが癖になっている方も少なからずいらっしゃいます。
特に、寝ている時の歯ぎしり・食いしばりが癖になっている方に対しては、マウスピース(ナイトガード)などで歯を保護するという方法もあります。
歯牙接触癖(TCH)

「ふと気付くと、上下の歯がくっついている」という人も要注意です。
本来、歯の間には常に隙間が空いているべきで、食事の時などを含めても、接している時間は1日で計15分程度となるはずです。これよりも長く歯が接している方は、歯牙接触癖(TCH)であると言えます。TCHとは、「トゥース・コンタクト・ハビット」の略です。
パソコンなどを操作するために下を向いた時に、自然と上下の歯が接触していませんか?これだけでも、歯や周りの組織・関節に悪影響を及ぼします。まずは自覚し、歯を離すよう心がけましょう。
ストレス

強いストレスを感じることは、全身の免疫機能低下につながり、同時に歯の周りの組織の免疫力も弱めます。
また、ストレスを強く感じた時に歯を食いしばる癖がある方がいらっしゃいます。このような無意識で行ってしまう癖も、歯や周りの組織に大きな負担をかけ、歯周病を悪化させます。
なお、疲労や寝不足も、歯の周りの組織の免疫力低下を招きます。ストレスと同じく、歯周病を悪化させる要因です。
合わないかぶせ物・入れ歯

虫歯治療やインプラントで入れたクラウンなどのかぶせ物、そして入れ歯などが歯にぴったり合っていないと、歯とかぶせ物の間に細菌が入り込んで繁殖しやすくなります。
また、自然の歯とかぶせ物・入れ歯の高さがズレていると噛み合わせが悪くなり、歯に強い力が加わりやすくなります。歯ぎしり・食いしばりと同様、歯と周りの組織にダメージを与えます。
薬の長期服用

抗けいれん薬や高血圧・狭心症の薬、免疫抑制剤など、特定の薬を長い間服用し続けた結果、副作用で歯肉が腫れやすくなることがあります。
歯肉が腫れると歯磨きが難しくなるため、プラークがたまりやすくなります。結果的に、歯周病の症状も進みます。
妊娠

妊娠・月経などによるホルモンバランスの乱れが、歯肉の腫れを招くことがあります。
もちろん、丁寧に歯磨きを行いプラークを取り除けていれば心配はありません。しかし、妊娠初期は体調の変化が激しく、しっかり歯磨きすることが難しくなる方も多いでしょう。
妊娠中は、歯肉の腫れと歯磨きの難しさから、歯周病が進行しやすくなるのです。
遺伝
生まれつき、歯周病が進行しやすい遺伝子型を持つ人もいます。
それだけで歯周病が悪化するわけではありませんが、もし親御さんが若いうちに歯周病で歯を失っているとしたら、早めに治療を考えたほうが良いでしょう。
歯周病によって引き起こされる全身疾患
歯周病の影響範囲は、口の中だけではありません。細菌から出た毒素が全身に回ると、様々な疾患を引き起こします。
糖尿病
深い相関関係にある糖尿病と歯周病。糖尿病は、歯周病の合併症の1つです。
歯周病は、血糖値を下げるために必要なインスリンの生成を抑制します。その結果、血糖値が上がりやすくなり、糖尿病の症状が悪化します。
狭心症・心筋梗塞・脳梗塞
歯周病は、心臓や脳の重篤な疾患の原因にもなります。
歯周病の細菌が全身を巡った結果、心臓などに血栓を作り、詰まらせることがあるためです。
早産・低体重
歯周病の細菌から出る毒素は、子宮の収縮を促進します。
胎児の成長に悪影響を及ぼすので、妊娠中は特に歯周病に注意が必要です。
その他の疾患
肺の機能低下や肺炎、関節リウマチなどの関節炎・腎炎などを引き起こす可能性があります。
歯周病の細菌は、全身に様々な悪影響を及ぼすのです。