コロナウイルスと歯周病の関係

コロナウイルスと歯周病の関係

全国的に蔓延が広がるコロナウイルス(COVID-19)。
程度は人それぞれですが、症状によっては死に至るケースもあり、ワクチン接種が開始された現在でも緊迫した状況が続いています。

定期的な歯科検診は、コロナウイルスの重症化予防にも効果的と言われています。

一見直接的な関係がないように感じる歯科検診。

こちらの記事では両者の関係について、詳しく解説いたします。

コロナウイルスと歯周病

コロナウイルスの症状とは

コロナウイルスの症状は、人それぞれ異なります。

約80%の方は無症状もしくは軽症、高齢者に該当する約15%の方は重症肺炎、そして残りの約5%の方は急性呼吸促迫症候群(通称:ARDS)を発症すると言われています。

そのほか、血管炎や血栓症、脳梗塞、心筋障害などが併発するとともに、急性腎機能不全などの多臓器不全を合併するケースも報告されています。

特にARDSは致死率が高いことから、危険視されている症状です。

口腔細菌とコロナウイルスのつながり

歯周病は、日本人の多くが罹患している国民病であり、30代以上の3人に2人が歯周病を患っているというデータもあります。
しかし、自分が歯周病を罹患していると認識している人は少ないのが実情です。

歯周病の症状は、歯肉からの出血・発赤・腫脹などの炎症の症状が起こり、歯ぐきや歯を支える骨が弱くなります。

コロナウイルスは、目、鼻、喉、口腔などの粘膜にある受容体(ACE2)を介して侵入し、増幅すると言われています。
歯周病の口腔細菌は、喉や舌を保護している粘液の糖タンパク質を溶かす分解酵素(プロテアーゼ)を出すため、ウイルスが受容体に吸着し侵入することを手助けしてしまうのです。

つまり、歯周病を患っているとコロナウイルスに感染するリスクが高いと言えます。

エンドトキシン血症

コロナウイルスの重症化に関わる病態のひとつに、発熱や血圧低下、白血球数や血小板数減少などの全身症状を引き起こすエンドトキシン血症という症状があります。

エンドトキシン血症は、口腔内細胞の内毒素(エンドトキシン)が、歯肉から体内に侵入することによって引き起こされ、歯周病があると発生しやすくなります。

米国では、一定期間歯磨きを停止する実験で、56%の若者がエンドトキシン血症を発症し、その後の口腔清掃により回復したという報告が上がっています。

コロナウイルス感染症の重症化のリスクを軽減するためにも、日頃の口腔ケアの徹底、定期的な歯科検診が重要です。

コロナウイルスの重症化を引き起こすサイトカインストーム

サイトカインストームとは

エンドトキシン血症を発症している状態で、新型コロナウイルスに感染すると、サイトカインストームを引き起こすリスクにつながります。

サイトカインストームのサイトカインとは、免疫系細胞から分泌されるタンパク質のことを指します。

サイトカインが分泌されることで、発熱、倦怠感、頭痛などの症状を引き起こし、我々の身体に異常が起きているサインを送る大切な役割を果たしています。

サイトカインストームとは、これらのサイトカインが過剰に分泌されてしまう、いわゆる免疫の暴走状態を指します。
本来であれば、ウイルスと戦い自分の身体を守る役割の物質が、結果的に自分の細胞までを傷つけてしまう状態です。

サイトカインストームが起きると、発熱や倦怠感などが過剰に起き、全身状態の悪化に繋がります。

コロナウイルスによるARDSの発症も、このサイトカインストームによって生じると考えられており、治療は抗ウイルス薬だけでは不十分であることから、サイトカインストームを抑制する必要があります。

サイトカインの種類

サイトカインにはいくつか種類があり、その中でもインターロイキン6(IL-6)、TNF-αなどは、強い炎症応答を引き起こすため、炎症性サイトカインと呼ばれています。

大量に産生された炎症性サイトカインが血液中に放出されると、過剰な炎症反応が起こり、臓器に致命的な傷害を与えることがあります。

コロナウイルスに感染すると、血中にIL-6が増加し、このIL-6が血管から血液凝固を促進するPlasminogen Activator Inhibitor-1 (通称:PAI-1)という分子を放出させます。
このPAI-1によって、肺などの器官に血栓ができてしまい、重症化に繫がるケースが報告されています。

実際にコロナウイルスによって亡くなった方は、血液中から高い数値のIL-6が検出されたというデータもあることから、サイトカインストームの脅威が分かります。

定期的な歯科検診のすすめ

お身体全体の健康増進

日常的に行う口腔ケア、定期的な歯科検診は歯の健康管理だけでなく、お身体全体の健康管理につながるメリットがあります。

身近な例としては、口腔ケアはインフルエンザなどの季節性のウイルスの感染予防としても有効です。

口腔ケアすることで、分解酵素(プロテアーゼ)の増殖、そしてウイルスが気道の粘膜から細胞へ侵入することを防ぐため、インフルエンザをはじめとする病気の発症、重症化の防止につながるのです。

寄り添った治療で問題解決へ

歯周病は、口内だけで完結する問題ではなく、全身疾患に繋がる慢性疾患とも言われています。
そのため、当院ではお口を「全身の中の一つの臓器」として考え、定期的な歯科検診によって、患者様のお口の中の健康状態を管理することを大切にしています。

歯周病を罹患している認識がない方は、自分がコロナウイルスの感染、さらには重症化のリスクが高いことに気がついていない状態です。

一度お口の中の健康状態を見直してみませんか?

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